翻訳のススメ

技術的な内容の文章の翻訳について. 私がなんで翻訳活動をしているのかを, 翻訳をしてみたい人へ向けて書きます.

そもそも翻訳について

O’Reilly さん, KADOKAWA (旧アスキー・メディアワークス) さん, オーム社, さんを始め, 英語で書かれた技術書の訳書は多く出版されています. 他の言語での事情は知りませんが, 日本語への翻訳の需要はかなりあると考えて良いでしょう.

逆に「英語で読む方がより新しい情報を得られる」というメリットや「訳書が出続けると, 英語を読まない人が減らない」という指摘もあります. (c.f. http://anond.hatelabo.jp/20111230052116) 日本の英語教育の話も絡みそうで, なかなか難しい話だと思います.

「翻訳は必要なのだろうか? それとも不要もしくは, すべきでないのだろうか?」と迷ったときもありますが, 結局, 今もボランティア (オープンソース活動の一部になるのかな?) の翻訳活動を続けています. そんな私の経験について少し話をします.

私の翻訳活動

私は Python ドキュメント日本語翻訳プロジェクト というプロジェクトに参加しています. 文字通り, Python の英語のドキュメントを日本語に訳し, 公開するプロジェクトです. プログラミング言語はバージョンを上げながら更新されていくものなので, それに合わせてドキュメントも更新されていき, 終わりの無い翻訳作業になります.

Python のドキュメントは初心者から中級者あたりを対象とし, 非常に手厚く文章が用意されています. そこには初心者向けのチュートリアルや用語集も含まれています. そのためこれを翻訳することは, 日本語が母国語の初心者には役に立つ資料を作ることになるでしょう. Python は標準ライブラリの数が多いため, 詳細を知らないライブラリも多々あります. その仕様が詳細に書いてあるこの文書は, 新しいライブラリを使うときに有用です.

参加した動機

そもそもこのプロジェクトに参加した理由は「Python のことを隅々まで知りたい」という勉強目的でした. 翻訳作業では英語の文章から, 書き手が伝えたかったことのイメージを頭の中に作り, それを日本語に変換しています. そのときに技術的な理解があやふやなままだと, 書き手が言いたかったことは 1 つの像を結びません. そこで REPL でプログラムの動作を調べ, 説明が何を指しているのかを理解し, それを日本語の文章に落とす作業を行います. この過程で言語やライブラリの知識が増えることを期待していました.

英語力については「ついでに英語が読めるようになればいいかな〜」と軽く思っているくらいでした. それよりも「英語を翻訳している俺カッケー」という厨二心の方が強かった気がします.

参加した所感

Python の知識を増やし, 理解を深めるという点は成功しました. これは目論見どおり, 翻訳するときに隅々まで文章を読むことが功を奏したようです.

英語力については, 期待以上に鍛えられました. 翻訳を続けていると, 英文の構造や意味を理解するのが速くなったり, 「構文からして次はこう来るかな」というのが予想できるようになったりします. ただし, 鍛えられるのは情報技術についての読み取り能力だけですが. 読む英文の数が多くなるので, 書く能力は多少上がりますが, それほどでもありません. 聞き取りや喋りに関しては全く鍛えられません. 当たり前ですね.

興味の強い技術的な内容だったため, iKnow! も Lang-8 も続かなかった自分が, 月単位で英語に触れ続けることができました. 継続して触れていないと英語はすぐに忘れてしまうのですが, このプロジェクトのおかげで英語の訓練を続けることができました.

どうも私は元々, 文章を書いて人に何かを伝えることが好きだったようです. 2 月に仕事が忙しかったとき, その反動で通勤中や家での自分の時間ではほぼずっと翻訳をしてました. 疲れてるときにやってしまうくらいなので, まぁけっこう文章書くのが好きなんでしょう. ちょっとでも自分の書いた文章を公開して, 誰かに読んで欲しいと思っている人は, こういった翻訳プロジェクトに参加してみてはどうでしょう?

翻訳の必要性について

何か新しい技術について知って使ってみよう, という人には母国語のドキュメントがあることが重要だと考えています. 技術周辺の知識が無い状態で母国語でない文章を読むのは,「その技術について勘違いをしているのか」「外国語の読解を勘違いしているのか」で悩んだ場合に非常に面倒です. せっかく新しいことを知ろうとしているのに, そこでつまづいて止めてしまうのはもったいないと思います.

私は初心者以外に対しては「中級者以上の人は英語でも気にせずドキュメント読め」という考える人ですが, それでもちょっとした調べ物のときは日本語の方が速く読めるので有用だと思います. 私自身もそう感じています. 何人かの仕事で Python を使っている人からドキュメントが翻訳されていることについて感謝されたこともありますし, やっぱり必要なのだなと思っています.

issue お待ちしてます!

Python ドキュメント日本語翻訳プロジェクト では, ドキュメントの不備についての報告を受け付けています. Issue リスト に登録すると, それを不定期にプロジェクトメンバーが見に行って対応しています.

現在翻訳しているのは 3.3 ですが, 2.7 の翻訳の不備でも気にせず登録してください. 実際に読んだ方の報告をお待ちしております.

翻訳者はもっとお待ちしてます!

翻訳のための手は常に足りていないので, 翻訳してみたいという方, 是非プロジェクトに参加してください. まずは, メーリングリスト http://www.python.jp/mailman/listinfo/python-doc-jp に参加して, 翻訳したいという旨を python-doc-jp@python.jp へ送りましょう.

趣味でやっている翻訳が, 誰かの助けになっている

  ∧∧
  ( ・ω・)
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俺はそういうことに幸せを感じるんだ

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